ミュージック・マガジン9月号「ドクター・ジョンとニューオリンズの現在」


久しぶりに「ミュージックマガジン」を読みました。


ニューオリンズ特集だというので、ひとつ買ってみようかな、と思って本屋に行きました。
音楽雑誌なんてずっと買ってないし、幾らくらいするんだろう。
手にとって値段を見ると、800円以上。
思ったより高い。とりあえず中身を見てみよう。

Dr.ジョンの新譜が取り上げられてる。
へー、サッチモがテーマなんだ。だいぶ攻めた音作りみたい。聴いてみたいな。
本人への電話インタビューと、ピーター・バラカンともう一人ミュージシャンのコメントが載ってる。あとは過去のアルバム紹介。
その後に、ニューオリンズの現在特集。
ちょっとした記事と、山岸潤史のインタビューと、ディスク・ガイド。
あと、プリザベーション・ホール・バンドのライブ・レポートも載っていた。


残念ながら、僕にとっては面白い内容ではありませんでした。
まず基本的に、載ってる情報はほとんど知っていることばかりでした。
これは、僕が実際に現地にいたので、仕方ないのかもしれません。
とはいえ、もう帰国して3年。その間、新しい音楽動向だってあるに決まってます。
でも、その情報が日本に入ってくるにはまだ数年かかるということなんでしょう。
例えば、ディスクガイドに載ってるLuke Winslow King。
彼は、ハリケーン後の新しい音楽シーンでは、僕がいた頃からある程度は知られた存在でした。僕も一緒に演奏してた若いミュージシャン達で作ったアルバムは既に素晴らしい出来でした。
でも、3年経ってもまだ日本ではほぼ知られていません。

そうすると、僕が去った後にいいミュージシャンが出てきていたとしても、日本に入ってくるまでにはまだまだ時間がかかるんでしょう。
結局、ある程度ビッグになってメジャーレーベルからCD出したり、少なくとも大きなフェスティバルの常連になるくらいでないと、海外には届かないわけです。
ニューオリンズで面白いのはやっぱりローカル・シーンだと思いますが、CDだって手に入りづらいわけですから、仕方ありません。
日本にいてリアル・タイムで現地の状況を知ろうとしたら、毎月Louisiana Music Factory から新譜を全て輸入して聴くしかないでしょう。
大金の用意が必要です。
執筆側だって、手に入る限られた音源や情報を元に記事を書いてるわけですから、どうしても「まとめ記事」的なものにならざるを得ないんだと思います。


ただ、僕のケースは例外としても、内容薄いと感じました。
だって、ニューオリンズ音楽って、過去に何度も、それこそミュージックマガジンでも特集されてきてます。ガイド本も出てます。今回の特集でそれら以上の内容はありませんでした。

そこで思ったのは、これはきっと、ニューオリンズやドクター・ジョンを知らない人へ向けての特集なんだろう、ということ。
プリザベーション・ホール・バンドがフジロックに出たので、それを新鮮に感じた人もいたことでしょうし。
ただ、それならもう少しニューオリンズの包括的な記事があったら良かったんじゃないかな。ドクタージョンのディスク・ガイドもあるけど、紹介内容は薄いですし。

なんだろう。
僕が、昔のミュージック・マガジンや、昔のレコード・コレクターズに慣れてるからなんだろうか。
こだわりなく決まって購読してる音楽雑誌の中に、毎月ちょっとしたアクセントとして特集記事があって、それも雑誌の一部として軽く読み流せるようになってる、というくらいの印象を受けました。

買う気で行ったのですが、買わずに本屋を出ました。




いやいや、いいんだ、きっと!
俺みたいな層に向けた特集じゃないんだよ!
ファンには薄く感じる内容のものでも、定期的に特集が組まれることで、ニューオリンズ音楽に興味を持つ人が増えるかもしれないわけで。
そうやって興味を持ったら、いろんな本やバックナンバーや、ネットにも詳しい情報はいくらでもあるし。
雑誌ってもう、新しい情報を得る媒体じゃないのかもしれない。
広く浅く、情報をクリッピングして並べる場なのかも。

今号のミュージックマガジンだって、全部読めば僕の知らない情報はたくさんあるだろうし、そこで気になるものがあれば、後は自分で調べればいい。
表紙のイラストも素敵だし、読み捨てるにはいいのかも。
いや、雑誌って、本と違って読み捨てるものだよ、そもそも。


せめて500円だったら、買ったかもなー。

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