映画の感想「ミシシッピー・バーニング」



「ミシシッピ・バーニング」を観ました。
15年以上前に、一度観たことがある映画です。

黒人差別ものです。
1960年代アメリカ南部の、いわゆる公民権運動を扱った映画です。

昔の印象だと、暴力シーンやメッセージ性など、けっこう強烈な描写があったように思ってましたが、あらためて観てみると、とても正統派の映画でした。
暴力シーンも激しくはないし、意図的に強調する部分もなく、王道の社会派骨太映画です。

そう、骨太です。
映画は、屋外の水飲み場で2つの蛇口にそれぞれ「白人用」「黒人用」と書いてある映像から始まります。
バックに流れるのは、マヘリア・ジャクソンの歌う「プレシャス・ロード」。
もう、骨太宣言ですよ。
こんなオープニングにしてしまったら、それはもういい映画にしないと嘘でしょう。

内容としては、ミシシッピの田舎町で白人の活動家が行方不明になり、FBI捜査官がやってきて、南部の偏見と戦いながら事件を解決していく、というものです。
捜査の流れや事件の謎、といったことは、あくまで物語の大筋であって、全編を通して描かれるのは、当時の南部の町の差別意識の様です。

実際にこの時代には、KKK団という白人至上主義の団体があり(今も存在します)、普通の人の家が放火され、黒人がリンチされて木に吊るされて(「奇妙な果実」という歌になってますね)いたわけで、その様子はすべて映画の中に出てきます。
映画では、差別=悪、という単純化はせず、小さな町に生まれ育った人達の複雑な心境も描写されています。
とはいえ、そこにものすごく深く切り込んでいっているわけではありません。
多くの人が飽きずに最後まで観られるように、エンターテイメント(この映画にはしっくりこない言葉ですが)に仕立ててあります。
タイプの違う主人公ふたりの衝突や、ちょっとしたロマンスといった、定番の要素も入ってます。
そして、それらがまた、多すぎず少なすぎずといった感じで盛り込まれてるんですよね。
黒人が木に吊るされるシーンも、ぜんぜん強調されずに描かれますし、暴力シーンのバックにゴスペルが流れるのも嫌みがなく自然です。
伝えたい内容と、観客を引きつける要素とが、うまいバランスでまとまっています。

そして、全編を通してドラマを引っ張っていくのが、ジーン・ハックマンです。
彼を見てるだけで物語に引き込まれていきます。
あらためて、俳優の力を見せつけられました。
素晴らしいです。

正統的アメリカ映画の名作です。
内容は重いけど、誰でも楽しめると思います。
黒人差別や公民権運動に興味のある人に、何か1本、と言われたら、僕はこの映画を勧めるでしょう。


アラン・パーカーの映画には好きなものが多いです。
そこまで明確なカラーがある監督じゃないんですけどね。
バーディ、エンゼル・ハート、そしてコミットメンツ。
どれも面白かった。
コミットメンツに至っては、見終わって興奮して、その場で友達に電話してバンド始めて、しかもそのバンドが15〜6年続いているという。
コミットメンツもまた見直さなきゃ。

楽器を始めて以来、映画はほとんど見てなかったんです。
2時間もあれば、何かしら音楽の練習ができますからね。
でも、やっぱり映画はいい!

僕は、「ミシシッピ・バーニング」みたいな、脚本のしっかりした、きちんとお金のかかった正統派のアメリカ映画(ハリウッド映画ではない)も好きなんです。
最近ではイーストウッドの「グラン・トリノ」とか。
「タッカー」とか「我が心のボルチモア」とかもう一回観たい!
あーいろいろ観たくなってきた!
また、たまにブログにも書きますね。

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