Bulletproof Musician: ミスは上達につながるか

Bulletproof Musician という英語のサイトの記事を、ランダムに翻訳するシリーズです。
ミュージシャンのメンタル面に関する内容を扱っています。
音楽をやっていない方でも、自己管理やマインドの問題に興味があるなら、是非ご一読下さい。



毎週土曜の夜にナチョスを食べ続けて、数ヶ月経ちました。
町でいちばん美味いナチョスを探すためです。

チリ・ナチョス、チキン・ランチェロ・ナチョス、テキサス・ナチョス、ナチョス・グランデ。
 いつも悩むのは、美味かった店をもう一度選ぶか、それとも新規開拓の旅を続けるのか、ということです。

土曜ごとに、実力店と未知の挑戦者の間での選択を迫られるわけです。
挑戦者を切り捨てれば、どこかにあるはずの史上最高のナチョスに出会うことは叶わないでしょう。
とはいえ、いつまでも続けていたら、週末にナチョスを食べ続ける空しさから脱け出すことができません。


このジレンマは、音楽の場合にも当てはまります。


手の中の鳥か、遠くの二羽か

これは、"探索と活用のバランス"と呼ばれるものです。

スキルアップを行うには、ふたつの方法があります。
結果の分かった従来のやり方(例: 慣れたフィンガリングで演奏する=活用)か、新しいやり方(例: 新しいフィンガリングを試す=探索)か。
後者の場合、結果の保証はありません。
成果が出ないかもしれませんし、逆に飛躍的な上達に繋がるかもしれません。


言い換えると、安全圏に留まるか、可能性に挑戦するか、ということです。
もちろん多くの挑戦は、思ったような結果にならないでしょうし、単なる失敗に終わるかもしれません。


しかし、楽器のテクニックと身体細部の動作についての可能性を探ることで、何が良くて何が良くないのか理解が深まることは間違いありません。

それは、いつも通らない路地を歩いてみる様なことです。
迷ってしまうかもしれませんし、行き止まりにぶつかる場合もあるでしょう。
しかし、続けるうちに多くの細い路地を知り、より効率のいい、楽な道順が見つかる可能性もあるのです。
長い目で見れば、その方が行き帰りを楽しめるはずです。

これに対して、”練習でのミスは本番でも起こりうる”という考え方もあります。
失敗や判断ミスはそれ自体マイナスであり、自信を失ったり悪い癖に繋がる、というものです。


不安定さのメリット

シェフィールド大学の研究チームが、オンラインゲームAxonの利用者を対象に、学習プロセスに関する研究を行いました。

いくつかの発見の中で特に注目すべきは、最初のうちスコアが不安定だったプレイヤーほど、後から高得点を出す可能性が高いということです。
これは、以前に同チームが行った別の研究でも同じ結果が出ています。

さらにもうひとつ、興味深い発見があります。
10ゲームを24時間以内に終えたプレイヤーよりも、それ以上かかったプレイヤーの方が、7.3%も高いスコアを出したのです。
この結果から、長時間に渡って練習するよりも、休憩を入れながら数回に分けて行う方が、学習効率が向上するのだと考えられます。


Take action

これらの研究は、練習で(そしてステージ上でも)新しいアプローチを試すことにも繋がると言えます。
パフォーマンスが不安定なことがあっても、単純に実力不足とは言い切れないのです。

そもそも音楽の場合、常に “完璧な” 演奏をする必要がありません。
新しいことに挑戦しミスをすることも、許されます。
逆に、ミスを避けるあまり可能性を制限してしまうのは、もったいないことです。


練習の際は、どんどん新しいことを試してみるべきです。
例えば、同じフレーズを、あえて“間違った”やり方で演奏してみます。
極端なテンポを試したり、力の入れ方や指の位置を変えてみましょう。
可能な限りの異なるアプローチに挑戦してください。

それによって、何が良くて何がダメなのかについての、“地図”が広がっていくのです。

練習中のぶざまな演奏を他人がどう思うかなどと考えないように
そうしていれば、必ず新しい発見があるはずですから。

アインシュタインが言ったように、 “失敗の経験がないのは、新しいことに挑戦してない証拠なのです。”


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