Bulletproof Musician: 自信をつける方法 - セルフ・トーク

Bulletproof Musician という英語のサイトの記事を、ランダムに翻訳するシリーズです。
ミュージシャンのメンタル面に関する内容を扱っています。
音楽をやっていない方でも、自己管理やマインドの問題に興味があるなら、是非ご一読下さい。



How to Become a More Confident Performer


ミュージシャンとして、自分に自信がありますか?

常にリラックスして自信に満ちた演奏ができていますか?
それとも (本番の数日、数週間前から)不安が拭えず、緊張してしまうのではありませんか?

多くのミュージシャンが身に覚えがあることでしょう。
それでは演奏が良くないだけでなく、自分も楽しめません。


自信についての誤解

自信のあるなしは生まれつきだと思っている人も多いでしょう。
しかし、自信を持つことは、じつは簡単です。
そして、必要なときに湧いてくるようにできるものなのです。
自信は成功体験によって形づくられると言いますが、そうだとすると、失敗は許されないことになります。
私自身がそうでした。
自信をつけるには、とにかく練習しかないと信じていたのです。

しかし、これは単なる思い込みでした。
練習を重ねて成功を手にしたミュージシャン達でさえ、不安や自信のなさと戦っているのですから。
反対に、才能がないと言われながらも成功しているミュージシャンもいます。
彼らは自分を信じきっているからこそ、成功したのです。
練習を積んだから自信がつくのではないと、実は誰もが分かっているはずでしょう。

では、自信を手に入れるには、どうすればいいのでしょうか?


自信をつけるには

自信をつける手段のひとつが、セルフ・トークです。

これは、自分で自分に話しかける行為を指す心理学用語です。
誰もが毎日行っていることでもあります。
例えば、机の脚につま先をぶつけた時や、スーパーから戻って買い忘れに気づいた時など、頭の中でとっさに声がするはずです。
実際に声に出さず心の中だけで収まることもあるでしょう。
それでも、頭の中の声自体は消せません。

良くも悪くも、われわれは自分の声を聞き、それを信じます。
もし、事あるごとに自分に対して、どうせ才能がない、落伍者だ、と言い続けていると、本当にそう思い込むようになります。
落伍者の気持ちになり、そのうちに、自分が落伍者だと"証明する"ような行動を取るようになるでしょう。


潜在意識は聞いている

潜在意識は、心の声の全てを聞いています。
そこにはどんなフィルターも存在しません。
全ての声を聞き、いちばん頻繁に聞こえてくるものを真実だとみなします。
単なる冗談であったり、本当は逆のことを思っていたとしても、疑わずに信じてしまうのです。
潜在意識に冗談は通じません。
言われた言葉をそのまま信じます。
そして、自信というものは、その潜在意識によって形作られるのです。

コンピューターのようなものだと思って下さい。
こちらの意図することなどお構いなしに、出された指示にそのまま従うだけなのです。

"こんな難しい曲は無理だ" と言ったとします。
潜在意識=コンピューターは、発言の真意など気にしません。
その曲を演奏する技量がないのか、かなりの練習が必要だという意味なのか、あるいはただ時間が必要なだけなのか、と考えずに、そのまま受け取ります。
そして次第に自分自身も、この曲を演奏するは無理だ、と本気で信じるようになるのです。
無理だと思いながら練習していると、やる気も失せてきます。
いいイメージも持てなくなりますし、あきらめも早くなります。
けっきょく曲をものにすることはできず、心の声の予言したとおりの結果となってしまうのです。
これはself-fulfilling prophecy(自己充足予言)と呼ばれています。
「~は無理だ」という予言を続けることで、実は自分を甘やかしているのです。

自信をつけたいのであれば、まずは思考パターンをコントロールし、自信に満ちた考え方を持たなければなりません。

では、自信に満ちた思考パターンを獲得するには、どうすればいいでしょうか。
自分で自分に対して言った言葉は、たいてい覚えていないものです。
演奏中であればなおさらです。
まずは、それらを認識して書きとめることから始めます。


セルフ・トークを把握する

緊張状態では、いい考えはなかなか出てきません。
全く別の事柄だったり( 夕飯は何を食べようか…)、過剰に分析的だったり(親指を伸ばした状態で、指の動きを楽に、ひじの角度を保って、肩を落として…)、ネガティブな思考だったり (ああ、ここは練習で失敗したところだ…)するものばかりです。

脳というものは、一定方向に意識が向くようにできています。
複数の事柄に同時に意識を向けることは不可能なのです。
例えば、テレビに見入っている時に話しかけられ、見ながらでも話はちゃんと聞いていると主張したとして、相手は信じるでしょうか?

一度に処理できる情報量に限りがあるのですから、何をピックアップするかは自分しだいです。
お金の使い方と同じです。
予算に限りがあるなら、不要な物は買わない方がいいでしょう。

つまり、意識という貨幣を何に使うのかという問題なのです。
自信と成功に導く思考か、自信喪失と失敗に導く思考か、どちらに使うのか。
成功にも失敗にも無関係な、中立の思考というものは存在しません。
買い物の場合を考えれば分かるでしょう。
買い物には2種類しかありません。
本当に欲しい物を買うか、単に貯金を減らすと同時に欲しい物を先送りにするのか、どちらかです。

では、ネガティヴな思考を避けるにはどうすれば良いのでしょうか。
思考パターンを変えるには、まずは現在クセづいているパターンを把握することから始める必要があります。


セルフ・トーク・ノート

自分の思考パターンを知る最良の方法の一つは、セルフ・トーク・ノートをつけることです。

Step 1: 難しい曲を一つ選びます。

Step 2: それを演奏し、録音します。

Step 3: 録音は5分くらい行います。
その間、頭の中に何かが浮かんだら、演奏を止めてそれを口に出します。
そうすることで、思考が言葉として録音されます。

Step 4: 録音が終わったら、ノートを用意します。
ページの真ん中に縦に1本線を引き、録音された全ての言葉を線の左側に書きとめます。

さて、ノートに書かれた言葉を眺めてみます。
5分間でどれだけの考えが浮かんだか、数えてみて下さい。
思ったより少なかったでしょうか?
それとも多かったですか?

批判的なものや、無関係な内容、集中を妨げるもの、友人にはまず言わないような言葉が、どれだけありましたか?
「馬鹿野郎!」 などと自分を攻撃していませんでしたか?
演奏だけに集中できていましたか?
それとも、ミスを引きずるどころか、過去のミスまで思い出していませんでしたか("なんでいつも同じ音を外してしまうんだろう!")?
あるいは、先のことを考えていたのではないですか("一生、上手く演奏できないかもしれない…")?

こんどは、建設的な言葉はいくつありましたか?
正しい、思い通りに演奏できたときの感覚を思い出させてくれるものです。
例えば、"弓の切り返しをなめらかに"  "息の流れを一定に"  "いまのは良かった!" あるいは、"ささやくように"  "音を途切れさせずに" といった内容です。
かなり少なかったのではないでしょうか?


セルフ・トークを書き換える

さて、いよいよ思考パターンを変えていく作業に入ります。
自信を積み上げ、演奏を向上させる考え方をクセづけていくのです。

ノートに書き留めたネガティヴな思考に全て目を通します。
それらはたいてい、過去か未来に結びついているはずです。
つまり、現時点ではコントロール不可能なのです。
どちらにせよ、失敗についての思考は何も生みませんし、何の助けにもなりません。
ただ落ち込むだけです。

ノートの左側に書かれたネガティヴな思考を、ひとつひとつ上書きしていきます。
生産的でやる気の出るような、ポジティヴな言葉に書き換えて、今度はノートの右側に書きとめていくのです。

例を挙げましょう。


Failure-Type Thinking(ネガティヴ)
練習したって無駄だ。○○の方がずっと才能があるに決まってる。

→Success-Type Thinking(ポジティヴ)
努力して成功した人物は数えきれないほどいる。
自分だって、きちんと努力すれば彼らのようになれるはずだ。
成功は1%の才能と99%の努力、という言葉には、何かしらの真実が含まれているはずだ。


Failure-Type Thinking(ネガティヴ)
なんでいつも同じ所で間違えるんだ?俺には才能がないんだ!

→Success-Type Thinking(ポジティヴ)
よし、落ち着け。
どんな達人だってミスはするんだ。
仕切り直して次に進もう。
ミスの原因を考える時間は後でいくらでもあるんだ。   


陳腐で嘘くさく思えてもかまいません。
とにかく前向きに考えることが重要であり、それが、成功へのカギとなります。
この次にネガティヴな言葉が頭の中で聞こえたら、即座にポジティヴな言葉で上書きするようにして下さい。

じっさいに、この方法は非常に効果があります
意識の高いプレイヤー達は、こうした思考パターンを持っているのです。
まさに、成功者の思考パターンを言えるでしょう。

社会心理学者Barbara Frederickson の著作によれば、3対1の割合でポジティブな感情の方が多くなると、転換点に達し、“そこを超えると、環境に左右されず常に前向きでいられるようになり、以前は不可能だった目標に楽々と手が届くようになります。"

セルフトークを意識し、自分が自分の親友であるという視点を持つように心がけて下さい。
そうすれば、必ず自信はついてきます。
ミュージシャンとしても、人間としても

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