N.O.生活(渡米前) 9 - いよいよ留学準備

ニューオリンズに行くことは決まりました。
長期滞在するには、ビザが必要です。
ビザはいちおう各種あります。
就労ビザととか投資ビザとかアーチスト・ビザとか。
あと、宝クジもあります。
アメリカは、毎年一定数の永住権を抽選で発行してるんですよ。
日本人向けに申請代行してる会社も多数あります。
僕も調べて応募して、もちろん外れました。

現実的には、学生ビザしかありません。
最初は、やっぱり語学学校だろう、と思いました。
でも、毎日楽器も吹きたい。
音を出せる環境がないと困ります。
そうだ!
じゃあ、音楽学校に行けばいいんじゃないか!

調べてみると、ニューオリンズには音楽学校は多くありません。
私立の学校は学費がものすごく高い。
そうすると、必然的に公立大学になります。
ルイジアナ州立ニューオリンズ大学。
ここなら、1年間は通えるだけの資金がある。

ニューオリンズ大学は、総合大学っていうんでしょうか、いろんな学部があります。
文学部、理学部、工学部、ビジネス学部、そしてLiberal Arts学部というのがあります。
Liberal Arts学部は、たぶん芸術学部に相当するんでしょう、美術と映画と音楽があります。
音楽の中では、音楽教育、クラシック、ジャズの3つに分かれています。
僕はジャズには興味ないけど、他の2つは有り得ないので、消去法でジャズ科です。
ジャズ科の教員を見てみると、現地のトラディショナル・ジャズ・シーンのトップ・クラリネット奏者、Tom Fischerの名前があるじゃないですか!
まさか!
これは楽しみだ!

国外からの応募の場合、自分の演奏を2曲、ビデオに撮って送ります。
まずは、ジャズ・スタンダードのアドリブ・ソロ。
まいったな、モダン・ジャズなんて演奏したことないよ。
悩んで、Easy Livingを吹きました。
実はこの曲、それ以前も以後も1度も演奏したことはありませんし、今後も演奏する可能性は低いでしょう。
もうひとつの課題は、ジャズのレコーディングから1曲選んで、そのソロをコピーしてオリジナルの録音に合わせて吹く、というもの。
僕はニューオリンズの地元のクラリネット奏者Tim Laughlinのアルバムから、Imaginationを選びました。
西荻窪のリンキーディンクスタジオに、夜中、カメラと三脚を持ち込みました。
昼間だと、隣の部屋の練習の音が聞こえてきますからね。
1人で黙々と撮影しました。

音楽の課題はそれだけ。
あとは英語です。
大学なので、定められたTOEFLのスコアをクリアして提出しなくてはなりません。
毎日、朝から家で勉強の日々です。
気持ちを切り替えるために、スーツに着替えて勉強したりしてました。
毎日スーツ着たのは、産まれて初めての経験でしたね。
気に入ったスーツと、ネクタイも何本か持ってたから、着る機会ができて楽しかったです。

細かく覚えてませんが、確か夏にS.F.に行って、1年後には留学してるはずですから、帰国後TOEFL受験まで数か月しかなかったんだと思います。
こうして振り返ると、けっこうがんばったな、と思いますよ。
さすがに無理かもな、と思ったのを覚えてます。
でも、僕って本番に強いんです。
なんとか大学の求めるスコアクリアできました。
ギリギリの得点でした。

あと英語の健康診断書みたいなのが必要で。
どこでも発行してくれるわけじゃなんんです。
わざわざ麻布の方の医者に行ってもらってました。
これも安くはなかった。
10000円とかしたんじゃないかな。


書類をすべて送って、あとは結果を待つだけ。
しかし、いくら待っても全然返事が来ない。
合格であればビザ発行の手続きなども必要ですし、時間がない、どうなってるんだ、と、仕方ないので電話で問い合わせました。
時差があるので、深夜に電話しないといけない。
100円玉をたくさん用意して、近くの公園いある電話ボックスから架けたのを覚えています。
寒くて暗かった。
英語で問い合わせですよ。
緊張します。
何て言おうか事前に考えて、もしかしたら紙にメモったりしたかもしれない。
電話してみると意外とスムーズに話が進んで、もうすぐ結果出るから待ってろ、とか何とか言われた気がします。

そしてそれから少しして、郵便で合格通知が届きました。
今から考えると、書類送るの、忘れてたんじゃないかな。
アメリカって、そういうことが有り得る国です。
ニューオリンズは、特に。

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