カバー

好きな曲をカバーする。
ただ好きだからやる、というのも、もちろんいいんです。
でも、自分の看板で音楽活動をしているのであれば、それだけではどうか、とも思います。


Alfred Beach Sandal のカバーした「人魚」を聞いたんです。
曲名を見ずに聞いたので、始まってから、あの曲か!と気づきました。
あまりに良すぎて、泣いてしまった。

原曲も聞いたことはありましたが、耳に入ってきたヒット曲のひとつに過ぎなくて、特に印象に残っていませんでした。
あらためて聞き直してみても、あまりピンときません。
サウンドや、歌い方が、好みではないんです。

Alfred Beach Sandal のカバーは、素晴らしい。
センスがいいんです。
演奏もアレンジもいい。
歌いあげたりしないボーカルも、いい。
曲の良さが引き立ちます。
このカバーを聞いて、初めてこの曲の素晴らしさに気づきました。
曲もいいけど、歌詞がまたすごい!
名曲だと思います。

こんな風にカバーするなんて。
いやー嫉妬するくらいにいいバンドです。
ジム・クエスキン・ツアーで一緒だった岩見継吾くんが参加してます。
抑えた表現で、ソウルとファンクネスを感じさせ、演奏もとても聞きごたえがあります。
クールだけど肉感的で、ceroとかより全然好きですね。

「人魚」は、ミニアルバム「Honeymoon」に収録されています。

他の曲ももちろんいいです。
オススメです。


もうひとつ、印象に残るカバーがあります。
フランク・ブラックのカバーした「The Dark End Of The Street」です。

数え切れないほどカバーされてきた名曲ですが、シンガーがレパートリーのひとつして選ぶ場合が多いと思います。
その場合、大事なのはシンガーの歌であって、どんな風にカバーするかはそこまで重要でなかったりします。

フランク・ブラックはシンガーではありません。
ミュージシャン、バンドマン、ソングライターです。
さて、どんな風にカバーするんだろう、と思ったら、これがなんと直球勝負なんです。

なんのヒネリもなく、ただ歌います。
それも、いわゆるシンガー然とした歌唱とは異なる、淡々とした歌い方。
これはもうフランク・ブラックの歌です。
曲の本来の形を超えた、他のバージョンとは比較にならない感動があります。

この曲は「Honeycomb」に収められています。

ナッシュビルに行き、スティーヴ・クロッパー、レジー・ヤング、スプーナー・オールダムといった、アメリカ音楽のレジェンド達と共に制作したアルバムです。
その中であえて、ベタともいえるこの曲を取り上げ、正面から歌う覚悟。
そしてこの表現。
すごい。
何度聞いても震えます。
このアルバム自体大好きで、一時期は毎日のように聞いていました。


アルフレッド・ビーチ・サンダル、フランク・ブラック。
どちらのカバーも、素晴らしい。
原曲の良さがまずあって、それを消化して、自分の表現になってる。
それによって名曲がパーソナルな表現に変わり、また心に刺さる。
こう書くと当たり前のことですが、簡単じゃありません。
それに、そこまで意思を持ってカバーを行うこと自体が、少ないですから。

僕もGWOでThe Dark End Of The Street をカバーしています。
GWOでは、自分の内面を込める容れ物として選曲しているので、シンガーのアプローチに近いかもしれませんが、覚悟と自信はあります。
この曲を演奏するとき、ジェームス・カーと並んでフランク・ブラックのバージョンもいつも浮かびます。

「人魚」も、やってみたいと、アルフレッド・ビーチ・サンダルを聞いて思いました。
ライブも行こうっと。

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