2015年8月30日日曜日

レコーディングは準備が大変

昨日は丸一日、夜中までひたすらクラリネットを吹いていました。
いやーむちゃくちゃ疲れた!
明後日からのコロリダスのレコーディングに向けて、アレンジを詰めているんです。

僕は、レコーディングの場合、事前に吹くフレーズをだいたい決めておきます。
譜面に書きます。
もちろん、ジャズみたいな即興性の高いものは、その場のアドリブでもオッケーです。
でも、歌モノの場合は、それじゃ良くないと思うんですよ。

歌モノの曲を聞いていて、なぜかソロになると急にジャズのフレーズが飛び出したり、歌のバックの合いの手だけ周りとテイストが違っていたり。
そういうのが、昔から大っ嫌いなんですよ。
ソロだって曲の一部です。
バンドのサウンドに馴染んでなくてはならない。
歌のメロディーや、歌詞だってフレーズに反映させるのが理想です。

と、僕は考えているので、レコーディングでは自分のフレーズの細部まで練りに練りたいんです。


僕のやり方はこうです。

まずは曲の音源を何度も繰り返し聞いて、どこにどんなフレーズを入れるか、頭でだいたいのアレンジのイメージを描きます。

曲に合わせて吹いてみます。
いろいろ吹いてみて、気に入ったフレーズを書き留めます。
音源に合わせて吹いたものを録音してプレイバックすることもあります。

必要であれば、参考になりそうなレコードを探して聞いてみます。
聞いてるうちにフレーズが浮かぶこともあります。
あるいは、レコードから使えそうな部分をコピーして譜面に起こして、リズムや使う音を分析し、それを元にフレーズを作ります。

それでまた曲に合わせて吹いてみます。
何度も吹いて、自分にしっくり馴染むフレーズを作っていきます。
ソロなどは、何度も吹いて録音したものを譜面に起こし、断片を取捨選択します。
クラリネットは音域が広いので、その選択で迷うこともあります。
指グセなどもあるし、自分が自然に感じられるフレーズに落とし込むのが難しい。

吹かずに、音源を一曲通して聞いてみます。
フレーズをイメージしながら聞いて、曲全体でのアレンジを詰めます。
これは、通して聞かないと意味がありません。
全体の流れやバランスが重要なので。
何度も何度も聞きます。
 
後は、出来上がったアレンジをひたすら音源に合わせて繰り返し吹きます。
この反すう作業によって、フレーズも身体に入っていきます。
別に書いた譜面通りにやる必要はないんですよ。
フレーズが馴染むことが目的なので。
自分でも自然に吹けて、曲にも溶け込んで、しかも効果的なアレンジを、目指しています。


この作業は、時間がかかります。
今回コロリダスで録る曲のほとんどは、すでにライブでも演奏しているもので、全く一から取り組むわけではありません。
それでも、一曲に数時間かかったりします。

しかも、クラリネットはいわゆる上モノ楽器。
曲の基本リズムによってアプローチも変わるで、アレンジを考えるのは最後になります。

ゲストミュージシャンを交えてリハーサルをしたのが木曜日。
ようやくベースとなるリズムが決まりました。
僕が作業に入るのは、そこから。
そしてレコーディングは、翌週の火曜と水曜。
それまでに7曲のアレンジをしなくてはならない。
もちろん、ライブやリハなど他の予定もあります。
時間がなさすぎます。

木曜も、リハーサル後すぐにスタジオを予約して深夜まで作業をしました。
もう、空いた時間はとにかく練習。
外でもどこでもずっと音源を聞いて、思いついたフレーズはボイスメモに録音したり。

これまでの所、大変に素晴らしいアレンジが出来上がってきています。
いや、まだ実際バンドで合わせてはいないんですけどね。
最後みんなで合わせてサウンドを擦り合わせないといけない。
さて、どうなるのか。
間に合うのか。


今日はコロリダスのパーカッション奏者 英心の、ソロアルバム発売お祝いライブです。
会場は六本木「音楽実験室 新世界」。
昼からカラオケボックスで練習して会場入りし、これからサウンドチェックです。
この後も、合間を縫ってアレンジ作業をしないと。

もちろん、ライブも手は抜きませんよ!
今日のために秋田からやって来た英心のバンドに加え、コロリダスと、さらにアラゲホンジも出ますよ!
今夜ご予定ない方は是非〜!
コロリダスはトップで、18時からやりますよ!

英心 & The Meditationalies 

1stアルバム『からっぽ』リリースパーティ in 東京

六本木 新世界  OPEN :17時

LIVE:英心 & The Meditationalies /アラゲホンジ /コロリダス

FOOD:平日サロン

前売:¥2,000 (+1D) / 当日:¥2,500 (+1D)

2015年8月27日木曜日

クラリネットは鼻歌がいい 

ニューオリンズはクラリネットの町です。
数多くの素晴らしいクラリネット奏者を輩出してきました。
そして多くのクラリネット奏者が、3〜4人の小編成アルバムを残してします。
僕はそうした小編成ものが大好きです。

どれも共通した雰囲気があります。
地味で、味わい深い。
中庸のテンポで、熱くならず、終始リラックスしています。
そう、「リラックス」というのがポイントです。
まるで鼻歌のような。

普通のジャズの演奏とは違い、アドリブの応酬がメインではありません。
もちろんアドリブもありますが、それは、メロディーを優雅に崩してみせる、といった趣で、あくまでも曲が主役です。
歌えないフレーズは吹かない。


一番有名なのは、Louis Cottrelのアルバムでしょう。
Riverside Recordsが1960/1961年にニューオリンズで録音した、『Living Legend』 シリーズの中の一つです。
コットレルは、かなりアドリブを取ります。
でも、なんというか、淡々としてるんですよね。
アドリブに、ドラマ性や自己表出みたいなものがない。
上品で流麗で、ずっと聞いていられる。
かといってクラシックやイージーリスニングとも違って、躍動している。
ベテランの噺家のようなものかもしれません。
その話しぶりだけで、心地よくなれる。
味わい深い名盤です。


味と言えば、Paul Barnesのアルバム。
晩年の録音ということもあり、ミスや、危うい 瞬間もありますが、何とも言えない独特の雰囲気があるんですよね。
腕も衰えてもう「味」しか残っていない、という感じでしょうか。
泥臭すぎるリズムセクションの上に素朴なクラリネットが乗っている風情が、堪りません。


ヨーロッパのミュージシャンの録音にもいいものが多いです。
伝統的なニューオリンズジャズは、もはや時代遅れの音楽で、ニューオリンズでも廃れてしまっています。
しかし、ヨーロッパ(と日本)では人気があり、まだニューオリンズ・スタイルのバンドが残っているんです。 
Sammy Rimingtonも素晴らしいし、Chris Blountのバンド The Delta Fourなんか極上です。

僕の一番好きなクラリネット奏者は、ベルギーのRudy Balliuです。
彼の"Rudy Balliu Trio"は、憧れのアルバム。
3分くらいの曲が、全22曲。
とにかくいいメロディーを、リラックスした素朴な演奏で聞かせてくれる。
バンジョー(&ギター)とベースも素晴らしい。
誰ひとり、難しいことはやりません。
最低限必要な音しか出さない。
ルディ・バリウのアドリブは、とにかく素朴であったかい。
鼻歌どころか、もう喋るように吹きます。
まるで、アメリカ南部の昼間、ポーチで穏やかな会話を楽しんでいる様です。
いつかこんな音楽をやれたら、とずっと思っています。


クラリネットの小編成ものは、選曲にも特徴があります。
いわゆる「小唄」系の、美しいメロディーの曲がよく取り上げられます。
まあ昔のポピュラーソングですね。
アドリブの素材として選曲するわけではないので、コード進行より単にメロディが重視されるからだと思います。

Chris Burkeの"All I Do Is Dream"は、正にそんな作品です。
これはクリスがカナダのトロントのミュージシャンと録音したアルバムで、クラリネット、ベース、ピアノにトランペットも加わった4人編成です。
全18曲の半分以上は、ジャズでは誰も取り上げないようなポピュラーソングです。
オールディーズや、それこそフランク・シナトラが歌ったような曲ですね。
クリス・バークの朴訥としたクラリネットが人肌すぎます。


いい曲を、リラックスして雑念なく、鼻歌のように歌うだけ。
そんなクラリネットの演奏が理想です。
いつかそんな風な境地にたどり着けたらいいな、と思いながら、先人達の演奏を聴いています。


2015年8月25日火曜日

イヤフォン買いました

イヤフォンが断線したので新調しました。
SennheiserのCX300-Ⅱ。
かれこれ10年以上これを使っています。
失くしたり壊したりして買い直しながら、同じモデルを愛用しています。

このイヤフォンは、U字型と呼ばれるデザインです。
右側のコードが長くなっていて、首の後ろを回して耳にかけます。
これが好きなんですよ。
イヤフォンを耳から外したとき、そのまま首にかかるので。

普通のイヤフォンだと、外してから先端部をポケットやカバンにしまうか、改めて首の後ろにかけるか何かする必要があります。
この手間が面倒なんです。 
一度U字型に慣れてしまうと、もう戻れません。
だって、耳からパッと外すだけで、後は何のアクションもいらないんですよ?
つけてる時も、コードが身体の正面でプラプラしないので、書いたり何か作業するのに邪魔になりません。
とても優秀なデザインだと思います。

でも、なぜかあまり作られていないんです。
U字型はいつも数種類のモデルしかありません。
今回も、ゼンハイザーの他は2種類だけ。
一つは携帯電話用で、何か通話の操作も出来るようになっている。
そんなのいらないし、音も悪いというのでパス。
もう一つは、性能は良さそうですが、デザインがよろしくない。
なんたって、カラーがピンクのみ。
それでいて高い。
消去法でゼンハイザーに決定です。

ゼンハイザーは、いいイヤフォンです。
音もデザインもいい。
でも、安くないんですよ。
6000円近くします。
もっと安いのがあればいいんですがねー。
一時期は、オーディオテクニカが2000〜3000円くらいでU字型を作っていました。
ソニーや(確か)パナソニックも出してたことがあります。
でも、すぐ廃番になってしまう。
それでいつもゼンハイザーに戻ってくる、ということをずっと繰り返しています。

ゼンハイザーもいいんだけど、せめてもう少し選択肢があればなー。
なんでみんなU字型を使わないのか分かりません。
ぜひ使ってみて下さい。
いいから。

今現在は手頃な価格帯がなくて残念ですけどね。
ゼンハイザー買ってみても、損はしませんよ!
例えばappleの付属イヤフォンと比べたら、音も全然いいですし。
U字型を使う人が増えて、市場が伸びることを、切に願います。

2015年8月23日日曜日

SOUL大喜利やりました!

昨晩は久しぶりのGolden WaxOrchestra
待望のSOUL大喜利でした。
競演はLos Royal Flames、場所は新橋ARATETSU UNDERGROUND LOUNGE

構想から約9ヶ月、ようやく実現したこの企画。
お題を決め、それに合わせた曲を交互に演奏していく、というものです。
思いついた時は、俺天才!と思ったものですが、果たしてショウとして成立するのかは、全く未知数。
なので、ロスロイとGWOそれぞれ通常のステージもやり、最後にSOUL大喜利を持ってくる、という3部構成で臨みました。

どちらのステージが先かも、当日コイン・トスで決める、という趣向。
このコイン・トスがなかなか難しかった。
何度も落としたりして、けっこう手間取ってしまいました。
なんたって、4人中2人がサングラスしてるんでね、投げたコインがよく見えないんですよ。

結果、僕らが先行になりました。
大喜利コーナーが控えているので、短めに。
ソウル寄りの選曲でコンパクトにまとめて駆け抜けました。


続いてロスロイ。
後があるっていうのに、お構いなしにシャウトします。
さっさとネクタイも外してたし。
きっとこの人たちは頭がおかしいんでしょう。


そして、いよいよSOUL大喜利です!
お題を出し、コイン・トスで先行後攻を決め、演奏していきます。

やはりコイン・トスに手間取りながらも、始まりました!
相手がどんな曲をやるかは知りません。
わざわざリハも別でやりましたからね。

お互い仕込みネタもありました。
僕は鍵盤ハーモニカを。
フレディ・フェンダー"Enter My Heart"のイントロのフレーズを吹くためだけに、わざわざ海外から取り寄せたものです。
この曲を初めて聞いた時は衝撃でしたからね。
あのチープなイントロを再現するには、チープな楽器じゃないといけません。
しかしこの楽器、ものすご~く吹きづらくて参りました。
ウケてよかった!

ロスロイは、"She's About A Mover"用に、ギターをオルガンの音色に変えるエフェクターを持ってきました。
いきなりオルガンが鳴り出して驚きましたよ。
あの曲はやっぱりオルガンがポイントですからね。
さすが!


全体の流れはこんな感じです。

お題1「Gold Wax Records」
GWO→Don't Cry(The Ovations)
ロスロイ→I'm Living Good(The Ovations)

お題2「リトル・ウィリー・ジョン」
ロスロイ→Talk To Me
GWO→Let Them Talk

お題3「フレディ・フェンダー」
ロスロイ→Before The Next Teardrop Falls
GWO→Enter My Heart

お題4「ヒット曲」
GWO→Rainin' In My Heart(Slim Harpo)
ロスロイ→She's About A Mover(Sir Douglas Quintet)

お題5「癒し」
GWO→Goodnite, Sweetheart, Goodnite(The Spaniels)
ロスロイ→Are You Angry?(Thee Midnighters)

お題6「男気」
ロスロイ→I'm Not Ashamed(Bobby Bland)
GWO→When A Man Loves A Woman(Percy Sledge)

そして最後には、全員でサム・クックのTwistin' The Night Away をやって大団円。

いやー面白かった!
どうなるかと思いましたが、お客さんも楽しんでくれて良かったです。
またやって!との声もあったくらい。
こんな酔狂な企画に付き合ってくれた、アラテツさんに感謝です。

そのうち第二回もやりますよ!
けっこう準備が大変なんですが、負けません!
だって、こんなアホなことやってるの、まず他にいないでしょうからね!

2015年8月21日金曜日

坂本誠!こんなライブがしたかった!

昨晩は、バンジョー坂本さんとデュオでのライブ。 
いやー良かった!
あんなに地味で味わい深いライブになるとは!


僕のことを、エモーショナルなプレイヤーだと思っている人がほとんどだと思います。
感情を吐露するような、シャウトするような。
演奏していると、どうしても興奮してそうなってしまいます。  
でもリスナーとしては、実は抑えた演奏も好きなんです。
感情を表面に出さず、抑制した、音数の少ない演奏。
地味だけど深みのある演奏が、大好きなんです。

坂本さんは、正にそういうプレイヤー。
表面的な音を超越したような、もう何だかよく分からないけど心に響くような。
そんな坂本さんの滋味溢れるプレイに触発されて、僕自身も抑えた演奏ができた。
サブトーンのような音色で、思いっきり吹くことはほとんどありませんでした。
音域もほぼ中低音に留まり、たまに高音を使うときも、シャウトというよりファルセットのような感じで。
この感じこそ、僕が憧れるクラリネットのスタイルです。

こういう演奏ができる機会はなかなかありません。
試みたことはありますが、上手くいきませんでした。
共演者に、影響されてしまうんですよね。
一緒にやる人によって、自分でも驚くほどに演奏内容が変わってしまいます。
まあ、それってどうなんだろう、と思いますけどね。
誰とやっても同じクオリティでやらないといけないな、と。
もちろん、時と場合によっては割り切ってやりますが、ライブとなると、なかなかできないんです。

昨日は、良かった。
坂本さんに影響されて、いい演奏ができたました。
もちろん、デュオでのライブは初めてだし、アラもあったけど。
それでも、思い描くイメージから逸脱せずに演奏できたことに満足しています。
この方向で、もっと詰めていけたらいいな。
また絶対やりたいです。
やります!

1st SET

St. Louis Blues
I Ain`t Gonna Give Nonebody None Of My Jellyroll
Buddy Bolden Blues
When My Dreamboat Comes Home
Whenever You Are Lonesome
In The Sweet Bye & Bye

2nd SET

Careless Love
You Don`t Love Me
Why Should I Cry Over You
Down By The Riverside
Louisiana Fairy Tail
Second Line

3rd SET

If I Could Be With You
In The Good Old Summertime
Because Of You
Lonesome Road
Tishomingo Blues
Just A Closer Walk With Thee


今夜は新橋の ARATETSU UNDERGROUND LOUNGE で、バンジョーとデュオで演奏します。
ライブではなく、BGM演奏です。
もちろんチャージもないので、お気軽にお立ち寄りください。

2015年8月18日火曜日

ニューオリンズ・町と音楽の関係


※マット・ぺラインの1stソロ・アルバム。
近年ニューオリンズで作られた中で、一番好きな作品の一つです。



ニューオリンズは、音楽の町です。
そして、その音楽は非常に独特です。
港町ということもあり、色んな国や人種の音楽が混じりあっていると言われています。

日本でCDなどを聞いているだけでも、その独特さは十分に伝わってきます。
僕も日本にいる間、数え切れないほどの音源を聞き、様々な資料を読み漁っていました。
そうしてニューオリンズ音楽の雑多な要素を紐解いていくのは、とても魅力的な作業です。
その上で何度か現地に旅行もして、渡米したときには、すでにニューオリンズ音楽について自分なりの理解と確信を持っていました。
そして実際に伝統を背負った現地の年配ミュージシャン達と交流することで、確信は深まりました。

しかし、僕が理解したと思っていたのは、あくまでも音楽面での特徴に過ぎません。
渡米して初めて分かったことがあります。
それは、ニューオリンズ音楽は、「音楽」だけで考えても理解できない、ということです。


そもそも、いま町の音楽を支えているミュージシャンの大半は、ニューオリンズ音楽の伝統については詳しくありません。

理由のひとつは、仕事があるから、というだけで、何も知らない若いミュージシャンが移り住んでくるからです。

ニューオリンズは、音楽で生計を立てることが可能な町です。
それも、テレビへの曲提供やスタジオ仕事ではなくて、ライブ演奏で。
小さなバーからレストラン、ホテルまで、ライブ演奏を行う店は山ほどあり、チップで十分に稼げます。
それ以外にも、様々な企業や団体の集まり等で演奏する仕事がたくさんあり、そういったものはギャラもいい。
結婚式や、ちょっとした身内のパーティでもバンドが呼ばれて、そうしたものでも1人当たりだいたい200ドル以上はもらえます。
フェスティバル・シーズンは、さらに倍以上稼げます。
これは僕の経験からなので、ベテランや名前のあるミュージシャンはもっと多くもらっていると思います。

なので最近では、ニューヨークやボストンのジャズ学校を出た人たちが、仕事を求めてニューオリンズに移り住んできます。

彼らは、ニューオリンズ音楽については何も知りません。
ただニューヨークでは仕事がなく、流れてきただけです。
引っ越してきてから、仕事にありつくために、他のミュージシャンのライブに顔を出したり譜面を集めたりして曲を覚えます。

ただ、それはあくまでも仕事のためです。
ニューオリンズの音楽に興味を持って積極的にCDを買うようなことはない。
家で聞くのは、それまで聞いてきたのと同じコンテンポラリー・ジャズです。
そのため、ニューオリンズに定住しても、過去の伝統については無知なままなのです。


そして驚くことに、地元で育ったのに伝統を知らない、というミュージシャンも多い。

普通に生活しているだけでは、過去の音楽に触れることはないからです。
町で流れる音楽は観光客向けのものが多いし、一般向けのラジオやテレビからは、もちろん 流行の音楽が聞こえてくるわけです。
音楽が好きで自分でCDを買ったり、そうしたミュージシャンのいる場所に出向かなければ、なかなか伝統を意識する機会はありません。

一度、地元出身の若いミュージシャンと口論になったことがあります。

Avalonという曲があります。
元々はクラシックの曲だったそうですが、ベニー・グッドマンが演奏し、スイング・ジャズの定番曲になりました。
彼は、Avalonはニューオリンズ・ジャズの代表曲だと言います。
なぜなら町でたくさん演奏されてるから、と。
確かに、有名曲で盛り上がるので、観光客が来るお店ではよく演奏されます。
でも、けっして昔からニューオリンズで演奏されてきた曲ではない。
それは過去の音源を聞けばわかるし、年配のミュージシャンや、伝統的なバンドはほとんどこの曲を演奏しません。
僕が、Avalonはスイング・ジャズで演奏される曲でしょ、といくら言っても、お前はこの町で育ったわけじゃないから知らないんだ、と一蹴されてしまい、話になりませんでした。

もう一つ、印象深い話があります。
カーミット・ラフィンというニューオリンズの人気トランペッターがいます。
あるモダン・ジャズのピアニストが、伝統的なニューオリンズ音楽を勉強したいんだけど何を聴いたらいいか、と質問すると、カーミットは、ラジオを聴けばいいよ!と答えたそうです。
カーミットの勧めたのは、地元の現在進行形の音楽をジャンル問わず流すラジオ局で、それを聞いても、「ニューオリンズ音楽」について理解が深まるものではありません。
伝統を大事にするミュージシャンの間では、カーミットはニューオリンズ音楽を知らない、とされていて、これはそのことを象徴するエピソードとして聞かされたのですが、たぶん本当でしょう。
僕も、カーミットの音楽からは、ニューオリンズの伝統的な部分は感じません。


では、カーミット・ラフィンの音楽はニューオリンズ的ではないのか、と言うと、そんなことはない。
確かに、過去の音楽へのリスペクトは感じられないし、音楽的な特徴から考えてもニューオリンズの要素は多くありません。
でも、それでもやっぱり「ニューオリンズ」の匂いがするんです。

それは、微妙なノリや雰囲気、といった、抽象的な部分からきていると思います。
現地で普通のジャズやロックをやっているミュージシャンも多いですが、彼らの場合もそうです。
音楽的にはニューオリンズの要素はゼロだとしても、どこか「ニューオリンズ」ぽい。
これについては、音源を聞くだけでもある程度は分かるでしょうが、どうしてそうなのかは、現地に行ってみないとなかなか理解できないと思います。

逆に、住めば分かります。
ニューオリンズに住んでいると、次第に自分が町に同化していくような感覚があるんです。
それは、音楽とは関係ない、町の持つオーラのようなものです。
そして、それが自分に染み込んでいくことで、演奏から「ニューオリンズ」が聞こえてくるんだと思います。

これは、僕自身が実際に感じたことです。
町並み、空気感、人々の暮らしぶり。
もう、雰囲気としか言えないのですけれど、その雰囲気に自分の音楽が影響されていく。
聴いてる人、踊ってる人はもちろん、町中の人々が、音楽に混じってくるんです。
ニューオリンズを代表するクラリネット奏者マイケル・ホワイトは、「町の人々の話し方、歩き方、踊り方、そういうものが自分の演奏を形作っている」と言います。
そう聞いたときには、ちょっと大袈裟に思いましたが、長く住むうちに、自分でもその通りだと感じるようになりました。

ニューオリンズ時代、バンドでニューヨークに演奏に行きました。
2週間くらい、色んな場所で演奏しました。
同じメンバー、同じ音楽です。
でも、地元でやるのとは違う。
「音楽を演奏している」感覚になるんです。
これが、ニューオリンズで演奏していると、聞いている人々の反応や、店や通りの雰囲気が相まって、単純に「音楽を演奏している」のではない感じがします。
町に包まれて、人々と一緒に音楽を作っているかのようです。

ニューオリンズでは、ライフスタイルが音楽にも反映されます。
東京っぽい、とか、ニューヨークっぽい、とも言いますが、もっと深い所で町の空気が音楽に染み込んでいく気がします。
音楽は町の一部であって、それだけ取り出して考えることはできないんです。



音楽をあまり家で聞かなくても、ニューオリンズ音楽について何一つ知らなくても、現地に住んで演奏していれば自然と独特のノリが身についてきます。
それは、カーミット・ラフィンや若いミュージシャン達が証明しています。
逆に言えば、ニューオリンズ音楽を深く知りたいのであれば、現地に長期滞在するしかないと思います。
町を知らないと、分からないことがあるんです。

とは言え、長期滞在というのは現実的には簡単ではないと思います。
短期間の滞在でできるだけニューオリンズ音楽を理解したいのなら、ひたすらライブをハシゴすることはお勧めしません。
ニューオリンズ音楽の秘密は、音楽以外の部分にあるからです。
ライブは程ほどにして、昼間も行動してください。
ミシシッピ川沿いでのんびりして、人と喋ってください。
歩いて、ニューオリンズの空気を吸い込んでください。
町が、音楽なんです。

2015年8月17日月曜日

8/20(木) 近藤哲平×坂本誠

バンドっていいな、と書いたばかりですが、バンドではないライブの告知をします。

8/20(木)
近藤哲平・坂本誠DUO
19:30から3ステージ
1500円


大先輩のバンジョープレイヤー、坂本さんとデュオで演奏します。
坂本さんは、東京では本当に数少ない、「古き良き」ニューオリンズの雰囲気を出せるミュージシャンです。


日本で「ニューオリンズ」と言う場合、たいていは「今時の」現地の音楽にインスパイアされたものです。
コンテンポラリーな音楽を基本に、レパートリーやリズム・パターンにニューオリンズのスタイルを取り入れる、というやり方です。

対して、僕が惹かれるニューオリンズの音楽は、もっと土着のトラディショナルなものです。
地味で野暮ったくて泥臭いような、「ジャズ」のイメージとは真逆の音楽です。
自分自身を主張するものではなく、自分を消すような音楽です。

その感じを共有できるミュージシャンは、なかなかいません。
坂本さんは、そのひとりです。
わかりやすく言えば、「味のある」ミュージシャン。
僕も、年をとって、あんな風に味わい深いプレイヤーになれたらな、と思います。


この日は、煽ったりテクニカルなことは一切やりません。
淡々と、じっくりと、演奏します。
お店の響きも良いので、僕の音色や演奏の細部まで伝わると思います。

是非、お越しください。

2015年8月15日土曜日

『ジャージーボーイズ』見てバンドいいなって思った

ジャージーボーイズを見ました。
評判通り、いい映画でした。
イーストウッド作品を見るのは、『グラントリノ』以来。
イーストウッドの正統派の演出は、伝記映画によく合うな、と思いました。
誰でも楽しめる、いい映画。
50年前ならともかく、今の時代にこんな王道の映画をきちんと撮れることがすごいと思います。

と、安心しきって見てたら、あのラストシーン!
最後の最後、あれをストップモーションにしないなんて!
それまでの流れからの、あの演出。
震えました。
今まで見た映画の中でも、最高のラストシーンのひとつです。

って、見てない人には伝わらないですね、すみません。
でも、いいんです。映画の感想を書きたいわけではないので。
この映画を見て、バンドっていいな、って思ったんです。


僕は元々、アルトサックスでロックバンドをやってました。
分かりやすく言えば、ビートルズのサージェントペパーズみたいな感じかな。
ポップだけど、変なやつ。

その頃はバンドがやりたかっただけで、管楽器プレイヤーになる気は全くありませんでした。
すごく音楽性の合う奴がいて、ずっと一緒にやってました。

今ではバンドマンというより、クラリネット奏者としての活動ばかりです。
昔より音楽的にも向上したし、演奏環境にも恵まれてる。
好きな人と、いい音楽をやれています。
でも、バンドの素晴らしさはまた別だと思ってます。

バンドは、共同体です。
純粋に音楽の良し悪しだけでは成立しません。
人間的な部分の相性まで含めて、補い合う作業です。
だから、全員がその楽器におけるトッププレイヤーである必要もありません。
それでも、そのメンバーで集まったら、トッププレイヤー達の出す音よりもいいグルーヴが出せる、というマジックがある。
それは素晴らしく楽しいことです。

ジャージーボーイズでも、やっぱりバンドのあり方が、かっこいい。
 色んな葛藤がけっこうリアルに表現さてていて、それでもブランクを経て最後に4人で再び歌う姿に、憧れてしまう。
僕はバンドが好きです。


コロリダスに加入して半年以上経ちました。
僕が知ってるバンドとは色んな意味で違うし、正直なかなか温度感が掴めずにいました。
それがようやく最近、レコーディングとツアーを経て、バンドだという実感が湧いてきたんです。

これからコロリダスは変わるでしょう。
それは、きっと楽しい作業です。
僕はバンドが好きなので、今までよりもコロリダスに時間を割くようになるでしょう。
クラリネット奏者としての活動は、たぶん減ります。
ライブも整理していくつもりです。

GWOとニューオリンズ・ジャズはやりたいけど、なかなかやれる人がいないですからね。
コロリダスに、ご期待ください!

2015年8月14日金曜日

◯◯風〜っていうのは、ダメです。

最近の邦楽には、センスのいいサウンドが多いなーって思います。
色んなジャンルのおいしい部分を切り取って、ミックスしたような。
ぼーっと聴いてて突然、おっ!このフレーズ!って反応してしまうことがあります。
具体的なフレーズの引用じゃなくても、例えばスライドギターが効果的に使われてたりするのも最早ごくごく当たり前だし、もっと全然マイナーな楽器だって、普通の曲のアレンジに使われています。
でも、それで唸ったり感心したり、もっと言えば心が躍ったりすることは、あまりありません。


最近、ある新譜を聴いてたら、突然ライ・クーダーの名盤「ジャズ」の冒頭のギターそっくりのフレーズが飛び出してきました。
えー!っと思いました。
それは、ツギハギの引用でしかなくて、ハッキリ言って、それを聞いていい気分にはなりませんでした。
「ジャズ」は大好きなアルバムなのに。
そこからの引用であれば、嬉しくてニヤッとするはずなのに。 

なんで響かないのか。
たぶん僕が聞きたいのは、特定のアレンジやフレーズそのものではなくて、アレいいよね!音楽っていいよね!っていう、演奏を通じた同意、共感の相槌なんです。
残念ながら、その新譜の演奏からは、原曲を愛する気持ちは感じられませんでした。
全体のアレンジとしても、不自然、とまでは言いませんが、必然性がない。
この曲調ならこれでしょ!みたいな、俺音楽詳しいんだぜ!みたいな、頭で考えたような印象を受けてしまいました。


ちょっと前に、渋谷タワーレコードで、邦楽の新譜コーナーを試聴していました。
手書きの推薦文には、どれも期待させる言葉が並んでます。
でも聞いてみると、どこかで耳にしたようなサウンドで、すぐに聞くのをやめちゃう。
なんでだろう、僕が音楽にワクワクしなくなったのかな。
そしたら、中に1枚だけ、いきなりイントロからおお!と思ったCDがありました。
知らないバンドです。
へー、と思って、歌が入ってくると…あれ?この声!
ジャケットを見直すと、聞いてたはずのCDの隣に、細野晴臣「泰安洋行」が!
間違えて、隣のCDの試聴ボタンを押していたみたい。
10個ある試聴アルバムに、1枚だけ旧譜が入ってたんです。

40年も前のアルバムです。
それが、並んでる新譜の中でいちばん新鮮に思えるなんて。
音楽性が僕の好みだ、というのも勿論あります。
でも最初にかけたときに、ルーツ音楽を消化した独特のグルーヴが、確かに他にはないものに聞こえたんです。
これはすごい!と思ったんです。

少なくとも今の時代の耳からすると、アレンジもフレーズも決してものすごく斬新なわけではありません。
でも、それぞれの楽器から奏者の「訛り」が聞こえてきて、それが混ざり合って独自のグルーヴが生まれてるんだと思います。

それは、先に挙げたアルバムのような、ただの引用・再現とは別のベクトルです。
僕はそういう奏者の訛りみたいなものが聞きたいんですよね。
その訛りから滲み出る、フレーズや音楽への興味や愛情、いいよねコレ!っていう感覚。
同じフレーズを演奏しても、そういう個人的な思いは人それぞれ違うはずで、その思いが演奏から感じられる時に、心が動かされるんです。

色んな音楽が、例えば細野晴臣や林立夫を通過することで、独自の旨味が出てくる。
◯◯風の〜ということでアイディアを引っ張ってくるだけでは、あんまり面白いものは生まれないと思います。


そこそこ音楽を聞いてれば、そこそこのアレンジを思いつくのは、たぶんそんなに難しくない。
昔と違って、今では世界中の音楽に簡単にアクセスできます。
結果、そこそこセンスのいい音楽が増えてるように感じます。
でも、聞く方だって色々聞いてるわけで、最早よっぽどじゃないと新鮮には感じません。

表面的な新しさで聞き手の心を掴むのは、難しい。
自分で本当に共感し消化できたもので勝負した方が、心に届くし、結果としてオリジナルな音楽ができるんじゃないかな。

結局は、内面から滲み出てくるものがオリジナリティーであり、色気なんだと思います。

2015年8月12日水曜日

リード探し - Alexander、Gonzalez、Marca、イシモリ

リードで悩んでいます。

ここ4〜5年くらい、Alexanderのリードをずっと使っています。
Superiorの2.5番。


僕は薄いリードを使いますが、薄いとどうしても音が軽くなりがちなんですよね。
ラ・ヴォーズとかそういう傾向があると思います。
でもAlexander Superiorは、抵抗感がないのにコシがあって、息をどれだけ入れても受け止めてくれる。
僕にとっては理想のリードです。

でも、売ってないんですよ。
なので、海外からまとめ買いするか、新大久保のDACで取り寄せてもらっていました。

しばらくぶりに海外から買おうと思って、いつも使ってるサイトを見たら、なんと閉店している。
他を探しても全然売ってない。
売ってるものはすごく高い。
なんで?

Alexanderはサックスでは人気があるリードなので、会社がなくなることはないはずです。
まさかクラリネットだけ廃盤?

今度はDACに注文してみました。
そうすると、Alexander側の担当者が捕まらず、なかなか入荷時期がわからない、とのこと。
まいったな。

それで久々に、他のリードを試してみることにしました。
Alexanderは最高ですが、なかなか買えないのは困ります。
すぐに手に入るリードで他にいいものがあれば、乗り換えた方が楽です。
お店の詳しい人に相談して、傾向が近そうなリードを買ってみました。
ゴンザレスとマーカ。

右からGonzalez RC、Marca Superieure。
左端はイシモリのリードで、先月のライブの際に家にリードを忘れ、間に合わせで購入したものです。

ゴンザレスは、FOFというモデルが有名ですが、こっちのモデルの方がヒールが薄めだしアンファイルドで、いいんじゃないか、と。
吹いてみると、反応もよく、とてもいいリードです。パワーもあります。
でも、音がまとまりすぎる。
まろやかでクラシカルな音色になってしまう。

マーカは、まあ普通かな。
悪くないけど、やはりAlexanderほどのコシとパワーはない。

この二つよりは、イシモリの方が好みです。
でも、よく鳴るけど、やっぱりどこか上品なんですよね。

そもそもクラリネット奏者の殆どは、例えポピュラー音楽であっても、クラシックのコンセプトで吹いています。
なので、クラシックのホールで響くような、美しい音色の方向性のものしか需要がないのかもしれません。


リードで困るのは、たいてい10枚入りだということ。
10枚で2500円くらいが平均でしょうか。
なので、買ってみてイマイチだったとしても、捨ててしまうのは勿体無い。

やはり今のところ、Alexanderを使い続けることになりそうなので、今回買った分のリードは、練習用として活用します。
25枚ありますから、当分練習には困りません。

Alexander、いいですよ!
Superior以外のモデルも全部いい。
使ってみてください。
需要が増えれば、楽器店での取り扱いも始まるかもしれませんし。
まあ、現状、どこにも売ってないんで、試すにも試せないという・・・。

余談ですが、僕はなんとAlexander氏と同じ歯医者に通っています。
日本在住の様です。
直接会ったことはないのですが。
先生を通じてリード頼めないかなー。

2015年8月10日月曜日

Bulletproof Musician: モハメド・アリのアファメーション - “I am the greatest”

Bulletproof Musician という英語のサイトの記事を、ランダムに翻訳するシリーズです。
ミュージシャンのメンタル面に関する内容を扱っています。
音楽をやっていない方でも、自己管理やマインドの問題に興味があるなら、是非ご一読下さい。



 

4 Handy Dandy Tips for Brainwashing Yourself

http://www.bulletproofmusician.com/4-handy-dandy-tips-for-brainwashing-yourself/


“夢を描くことができ、その夢を信じられるなら、必ず実現できるはずだ。”
私のお気に入りの、ジェシ・ジャクソンのセリフです。
成功者の多くが同様の発言をしていますし (“夢を持てるなら、きっとかなう” 〜ウォルト・ディズニー)、スポーツ心理学の観点からも賛同できる考えかたです。

このセリフに共感する人は多いでしょう。
それでもほとんどの場合は、夢の手前の壁で立ち止まってしまうのです。
その壁を越えるには、まずは自分自身の心を説得する必要があります。

しかし、実現するかどうか(まだ)わからないものを、どうやって信じればいいいでしょうか。 
ミュージシャンとして生計をたてる、ボストン交響楽団の首席ベース奏者になる、といった、いまの自分には手のとどかない内容を信じるには? 


“The Greatest”

1964年2月25日、
大口をたたくことで知られた22歳のボクサー、カシアス・クレイが、ヘビー級チャンピオン、ソニー・リストンに挑戦しました。
かけ率は7対1で、誰もがソニー・リストンが勝つと思っていました。

しかし、予想に反し、勝者はカシアス・クレイだったのです。
そして、彼の試合後のスピーチは、その印象的な一節によって、歴史に残るものとなりました。

“I am the greatest (俺は最強だ)”

彼はその後、モハメド・アリと名前を変え、世界中で知らない者はいないほどの人物となりました。


このエピソードのポイントは2つあります。
まず、アリは試合後だけではなく、試合の前にも“I am the greatest”と発言していること。
そして、どんな勝ち方でチャンピオンになったとしても、それだけでこの生意気な若僧を“the greatest”とまで考える者はいない、という点です。
後年アリは、この時まだ自分でも“the greatest”とは思っていなかった、と認めています。
さらに、 “言い続けていれば、いずれ世界も信じるだろう、と思った"と発言しています。

しかし現在では、アリは“the greatest”だと、少なくとも偉人のうちの一人だと、誰もが認めています。

“I am the greatest” のエピソードは、心を説き伏せるテクニックの好例です。
広く知られたやりかたなので、おそらく名前を聞いたことがあるでしょう。

これを、"アファメーション"と呼びます。



アファメーションのイメージ

アファメーションには、さまざまなネガティヴなイメージがつきまとっています。
バカバカしい、あり得ない、あるいは、みっともないと考える人々もいます。
これはとても残念なことです。



信じれば叶う


モハメド・アリが偉大な人物となったのは、自分でそう宣言したからでしょうか?
そんなはずはありません。
The greatest の肩書きは、タダで手に入るものではありません。
手中に収めるのは楽ではなく、アリもそのための努力をしているはずです。
他の偉人たちと同様、彼もまた多くの壁にぶつかり、それらを乗り越えることで、歴史に名を残すまでになったのです。

とはいえ、アリが、世界に認められるずっと以前から、自分は偉大だと信じていたのは間違いないでしょう。
自分を疑う瞬間もあったかもしれません。
それでも、信念が揺らぐほどに悩み立ち止まることはなかったのです。



アファメーションの効果

アファメーションには、二つの効果があります。


まず一つめは、目標から目をそらさずにいられること。
アファメーションによって目標が明確化されて頭をはなれなくなり、自然と目標実現のための行動をとるようになります。

二つめとして、ポジティブな気持ちが増すことで、つねに良い結果を想像するようになります。
そして、想像することで、じっさいに良い結果にもつながっていきます。
金メダリストの場合を考えてみて下さい。
負けを想像して試合にのぞみ、金メダルを取って驚く選手がいると思いますか?



アファメーションの実際

以前、未来の自分の姿をイメージする方法について書きました(「信じる力」)。
アファメーションはそれとは異なり、未来に至るストーリーを直接的に描写します。

1. 意欲を持たせる

まず、興味が持てなければ、意味がありません。
アファメーションの内容によってインスパイアされ、意欲が起きることが重要です。
たとえば私が、“世界クラスのランナーになる” と宣言するとします。
しかし、走ることは、私にとって決して楽しい行為ではないので、このアファメーションはたいして効果はないでしょう。

2. 大きく考える

できるだけワクワクするような、大きな目標を考えるべきです。
とはいえ、やる気を失わない程度に、です。
例えば、“スーパーモデルの体型になる” よりも、“生涯最高のスタイルを手に入れる”のほうが有効かもしれません。

3. 疑わない

映画にたとえるなら、作品の設定に口をはさんでいては楽しめません。
化学実験のミスにより怒りで緑色に変身する男の存在を、疑ってはいけないのです。
“現実にはありえない” と思って細かい点を気にしはじめたら、せっかくの映画が台無しになってしまいます。

4. 声に出す

これは非常に重要なポイントです。
考えることと、声に出す、あるいは紙に書くことは、別物です。
そして、一度や二度では効果はありません。
100回、1000回と、言いつづけるのです。

しかし、ただオウムのようにくり返すだけでは意味がありません。
一回ごとに、そこに意思をこめながら言うのです。
小学校のころの私がそうでした。
私はよく休み時間に残されて、“人に迷惑をかけません”とくり返し書かされていました。
しかし何回書いたところで、私がおとなしいいい子にはなることはありませんでした。
意思をこめて自分に言い聞かせることがなくては、効果はないのです。


The one-sentence summary

“航空力学的には、マルハナバチは飛べるはずがない。しかし彼らはその事実を知らないので、いつまでも飛び続けているのだ。” 
~Mary Kay Ash


2015年8月8日土曜日

楽しいだけじゃ、足りない。


はこだて国際民俗芸術祭に出演しました。
とてもいいフェスティバルでした。
函館の街並みが素晴らしく、気候もちょうど良かった。
大きなステージで、いいライブができたと思います。

後でフェスティバルについて書こうと思って写真も撮ったのですが、予定変更して、色々と思ったことを書くことにします。
最近またライブ報告ブログみたいになってきているので、軌道修正です。
もっと、自分の思いや考えを書いていこうと思います。


コロリダスは3日間の参加でしたが、フェスティバルは一週間続きます。
その間、いろんな国から来たアーチストが、幾つかのホテルに分かれて泊まります。
夜は、出演者同士で飲んだり、時にはセッションが始まることもあります。
ホテルが貸し切り状態なので、ロビーで音を出せるんです。

僕らの最終日の夜、ホテルに戻ると、日本の他のバンドとインドのミュージシャンとのセッションが始まっていました。
実際は、セッションと言うほどのものではなく、思いつく曲を適当に演奏して騒ぐ、というものですが。

僕、そういうの苦手なんですよ。
バンドやってる中には、例えば飲み屋にギターがあると、すぐ手にとって弾いたり歌い始める人がいます。
そんな時、僕はすぐ帰ります。

僕はカラオケも行きません。
とにかく、ただみんなで騒ぐ、というのが好きじゃありません。
人といる時は、その人と話をしたい。
相手のことを知りたい、その人としかできない話をしたい、という気持ちが強いんです。

これは性分です。
小学校の頃からそう思ってましたから。
例えば、何人か集まってテレビゲームをやったりするのが好きじゃなかった。
ゲームは誰とやっても、1人でも楽しいわけで、せっかく好きな友達といるんだから、そいつとしかできない遊びをしたいって思ってたんです。

その感覚はずっと変わりません。
だから飲んでても、あれ知ってるこれ知ってる的な話は楽しめません。
会話に固有名詞の多い人とは、合わない。
僕は、相手の考えや感情やらに、興味があるんです。
どうやら普通よりも極端なくらいに。

飲んで楽しい、というだけでは、時間の無駄に思えてしまうんです。
あー楽しかった!だけじゃなくて、想い出だけじゃなくて、もっと何か深く残るものが欲しい、と思ってしまう。

なので函館のホテルでのセッションも、全然楽しいとは思えなくて、楽器は出さずに隅で飲んでました。

もっと音楽的なセッションなら、やりますよ。
ニューオリンズでも、飲んでみんなでセッションすることはありました。
ニューヨークに行った時も、ミュージシャンが集まるバーに行って、入れ替わり立ち代わり朝までセッションしたりしました。
でもそれは騒ぐのが目的じゃなくて、本当に音楽的なセッションでした。
飲んでても、みんなどこかで真剣です。
騒いで弾けてバカになるんじゃなく、楽しく音楽で会話をする、というものでした。

もちろん、弾けてバカになるため、あるいは楽しい想い出をつくるためのツールとして音楽をやってるミュージシャンがいるのも分かっています。
ただ僕は一緒に騒ぐのはしんどいです。

だから、ライブも、楽しかったというだけだは、満足できません。
テレビみたりパチンコいったりカラオケいったりするのと、何が違うんだろう、って思っちゃう。
音楽じゃなくてもいいんじゃない、って。

楽しいことはいいことだし、ライブやれば楽しいに決まってる。
でも、もっと欲しいんですよ。

函館のフェスも楽しかった。
オープニングパーティーのライブは異常に盛り上がったし、メインステージでの演奏も、内容・レスポンス共に大成功と言えるものでした。
でも、あー良かった楽しかった!だけじゃ、物足りない。
その経験が何かに結実するようでないと。
分かりやすく言えば、自分が成長できている、という実感が、欲しい。


こういうの面倒に感じるミュージシャンも少なくないと思います。
楽しけりゃいいじゃん、って。
ただね、もう小学校の頃から思ってることなので、この性分は変わりません。

一緒に演奏する方々、ご理解ください。