『男と女』を見ると「恋」がわかる気がする

恵比寿ガーデンシネマで『男と女』を見てきました。


2度目の鑑賞です。
はじめて見たときは10代後半かハタチくらいで、それ以来すごく好きな映画の一本にいつも入るけども、実は細部はほとんど覚えていませんでした。

この映画に限らず、細部は忘れてしまいます。
面白かったとか感動したとか役者がよかったとかいう、覚えてるのはたいてい感想だけ。
『男と女』については、「恋」の空気感を描いた映画、という風に記憶していました。

見直してみて、ああやっぱり素晴らしい!
感想は変わりません。
男女の出会いから距離が近づいていく過程の、空気の繊細な変化が、画面の隅々から伝わってくる。
二人の表情と風景と音楽。
有名すぎて不幸にも手垢にまみれてしまっているテーマ曲も、映画の画面だとしっくりきます。
そういう、ストーリーやセリフ以外の「情感」みたいなものが、全編にあふれてる。
アヌーク・エーメが美しい。
容姿だけじゃなくて。

そういえば、周りにジーン・セバーグのファンが多い中で、僕がずっとアヌーク・エーメが好きって言ってたのは、この映画のせいなんだと思う。
見てる間、自分も恋に落ちている気になりますからね。

平日午前中の回だったからか、年配の女性客が多い。
ひとつ隣の席にいた初老の女性は、映画が終わると眼鏡を外して目元を拭っていました。
彼女もきっと、この映画を昔にも見てるんじゃないか。
若くて、恋が身近にあったかもしれない。
思い出が、あるのかもしれない。
なんて想像してしまうような、素敵な映画。
前は違和感のあったラストの「ネガポジ反転」演出も、今回はすんなり見れました。


恵比寿駅まで戻る途中、たくさんの広告が目につきます。
どれにも、情感なんてない。
さっきまで見ていた世界との差がすごい。
芸能人が、ビール片手に満足そうにしてるポスター。
表面的には確かに楽しそうだけど、全部がウソくさい。
これを見て、うわー楽しそう!って本気で思う人が、どれだけいるんだろう。

「◯◯人が泣いた!」って書いてある 映画のポスターもありました。
映画に限らず、よくある宣伝文句です。
そんなにみんな泣きたいの?
『男と女』を見て僕も涙が出るけど、それは「泣いた!」っていうのとは違う。
心が震えて体がゾクゾクしてその延長として涙があふれたんであって、物理的に「泣いた」かどうかなんて、どうでもいいことです。
ボタンを押せば水が流れるような自動涙を、みんなそんなに欲しているのかな。

恵比寿駅に広がる即物的な光景よりも、さっきまでいた映画の世界の方が、よっぽどリアルに思えました。





コメント