音楽の話がしたい

音楽ライター小尾隆さんのブログを読みました。
マイナーでも良い音楽

若い頃から通ったレコードショップの思い出が綴られています。
店に通ううちに、他のお客と音楽話が盛り上がって、そこから友人関係がはじまることもあったそうです。
ここに書かれている芽瑠璃堂の他にも、いろんなレコード店やロック喫茶などで、そうした光景があったんでしょう。
手元のレコードを見ると、買った時の情景がよみがえる、と小尾さんは言います。


ものすごーく、うらやましいです!
こういうエピソードって、60代より上くらいの方の話によく出てくるんですよね。
音楽好きが集まるレコード屋が、いくつかあったらしい。
店主や店員やお客同士で、音楽を通じて会話が始まる。
ロック喫茶で議論したり。
古いミュージック・マガジンなんかでも、「論争」みたいなのが載ってる。
音楽について、話すこと、共有すること、議論することが、そこらじゅうで起こってたみたいです。
いやわかんないけど、少なくとも今よりは、音楽を通じた交流があったんじゃないか。

もう少し下の世代、50歳くらいの人になると、レコード屋で友達になって以来の付き合いで〜ってエピソードは、あまり聞きません。
あの店あったよね!とかは聞くけど、どうやらそれぞれ一人で行っていたみたいです。
僕はCD世代だからなのか、名物店主のこだわりのレコード屋!みたいなお店に足繁く通ったことすら、ありません。
レコードプレイヤー持ってなかったし。
よく行ってた輸入or中古CD屋はありましたよ。
高円寺のココモや、渋谷のサムズとか。
どっちももうないな。
ディスクユニオンになると、大型店だから店員の顔がパッと浮かばないし、タワレコに行く感覚に近いです。

いまなんか、もう店にもいかない。
AmazonとApple Musicのおかげで、家にいながらにして世界中のディープな音楽に触れることができる。
人と会うよりネットで調べたほうが、マニアックな情報を効率的に集められる。
僕よりもっと下の世代になると、中古屋にもいかないし外にもあまり出ないで、家でPCの前でひたすら夜中まで音楽を漁ってる、というのが普通なのかもしれません。


数日前にジャニスで借りたLos PiranasとTune-Yardsが、ものすごいかっこよかったんですよ。
もう大興奮です。
そうなると、人に話したくてたまらなくなります。
誰か近くにいれば、それが音楽ファンでなくたって、これすごいよ!!って聞かせることでしょう。
それで相手も「いいじゃん!」なんて言ってくれたら!
そもそも僕が興奮する音楽ってマイナーなものが多いから、それを共有できる人がいるとものすごく嬉しい。
そうした似た感性を持つ仲間が集まる場所が、きっと昔はたくさんあったんですよね。
興奮したまま、翌日どこかのレコード屋に行って、店主からこんなのもあるよ!って違うバンドを勧められたり。
そんな想像をします。


なんで人と音楽の話をするのが好きなのか、わかりません。
誰かと演奏するのだったら、肉体的とも言える単純な快感がある。
でも、好きな音楽について話すことで直接的な快感はありません。
なんでこんなに楽しいのか。
わからないけど、とにかく楽しい。
それこそ、理屈抜きで。

逆に、一緒に演奏してものすごく気持ちよくても、音楽の話がまったく合わないのでは、どこか物足りないんです。
音楽的な部分では、いいかもしれない。
でも、演奏の良し悪し以外に、「ツボ」や「センス」みたいなものがあって、それは実際のグルーヴとは直結しないかもしれないけど、僕の中では大事な部分なんです。

今日は誰と、明日は誰と、という風に、毎日いろんな場所に行って違う人と演奏して、それも楽しいことです。
が、僕の場合は、純粋に音楽的な要素だけじゃなくて、演奏を通じて相手と気持ちを共有したい、近づきたい、という欲求が強いんだと思います。
だからバンドに憧れます。
音楽のツボが合う仲間と、これいいよ!あれ知ってる?って話しながら、その共有したものがバンドの音楽性にも反映されていく。
そんな仲間と出会えて長く一緒に音楽探求を続けられたら、最高です。
グレイトフル・デッドやNRBQは、そんな感じだったんじゃないかな。


楽器をやってても音楽の話はしない人が、実は多いんです。
人名とかのデータ交換じゃなくて、これいいよね!って話ができる人は、本当に少ない。
楽器なんて道具なんだから、練習してコツをつかめば使えるようになります。
今時はみんな学校行ったりしてね。
でも僕は、道具を操る技術のやり取りには、他の人ほどの興味が持てないんです。
それより、感動を共有したいんです。


僕は音楽が好きです。
演奏することも、聴くことも。
演奏は、道具が使えれば誰でもできる。
でも、アレいいよね!って話は、音楽が好きじゃなきゃできません。
音楽の話がしたいです。
そうすれば、人生を共有できるから。

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