「日本のラジオ」を観て反省した

日本のラジオ」という劇団の芝居を観に行きました。
面白かった。
でも、後悔したことがあります。

この芝居は、拍手が起きないようなあいまいな終わり方をしていて、最後に(たぶん)主催の人が出てきて挨拶をして、終わったのがわかる、という作りになってる。
で、その人が、よかったらアンケート書いてってください、って言うんです。
で、みんな静かな中で(そういえば、最初から芝居後まで、たしか音楽はいっさい流れなかった気がします)なんとなく書きはじめて、でも僕は面倒だしいいや、って思って、ササッと席を立ったんです。
それで、帰ろうと思って階段を降りてる途中で、さっきまで舞台に出てた役者がみんなこっちにやってきて、すれ違いました。
「ありがとうございました」って言われて、僕もなんとなく会釈とかして。
たぶん主催で脚本ともしかしたら演出とかもしてるだろう、さっき最後に挨拶してた人とも、すれ違いました。
そのまま通り過ぎて、すぐに自転車に乗って帰りました。

帰り道、自転車をこぎながら、後悔しました。
なんでひとこと、「面白かったです」って言えなかったんだろうか。
面白かったのに。
小さな劇場で、けっこう汗水流して、やってるんだと思うんです。
会釈だけして素通りするのと、「面白かったです」って声をかけるのとで、きっとぜんぜん違う。
っていうのは、これから何回か残ってる公演の、力と言ったら大げさかもしれないけど、やっぱり嬉しいだろうし、いいことにつながるかもしれない。
いいもの見せてもらったのに、そんな小さな感謝の行為ができないなんて、情けない。

いいわけは、ありますよ。
だって慣れてないから。
たとえば、音楽の場合は慣れてるわけです。
いい演奏に出会えば、できるだけ声をかけるようにしてるし、ライブ会場の空気の中でなら何の躊躇もありません。
でも、舞台って、なんかね、僕以外みんな役者の知り合いのようにして話してて、声をかけるのが気後れしてしまう。
「よかった」って言われて、どんな状況であっても、嫌な気になる人なんているわけないのに。
わかってるのにな。
わかってたら、やればいい。
やらなきゃ、わかってないのと同じこと。
次から、やろう。
やってる側も真剣なんだから、客だって楽しちゃダメだ。
って反省しながら、自転車をこぎました。



この芝居、面白いですよ。
お話としては、風俗店の人間模様にヤクザも絡んで事件も起こって、でもそのいわば紋切り型の設定の中に、じわりとくる部分が本当に微妙にまじってるという、なかなか絶妙なものです。
テンポがいいから、内容がいいにも関わらず、たぶん誰でも楽しめる。
意識的に排してるんでしょう、大げさな役者の見せ場みたいな部分もあまりなくて、スラーっと話が進んでいきます。
いい意味でエンタメものを見てるくらいの感覚で、80分がすぐです。
あんまりテンポよすぎて、小劇場関係に多そうな「芸術」好みの人には好かれないんじゃないか、なんて心配になるほどです。
僕自身、見てる間や見終わってすぐは、そんなにものすごく面白かった!って思わなかったんだけど、あとから考えてみると実は面白かった、という、不思議な感想を持ちました。

あと個人的にすごくよかったのが、いわゆる小劇場っぽさがないところ。
小劇場独特の、内輪ノリのつまんないお約束ギャグや、不要なシモネタや、変な馬鹿騒ぎみたいなシーンが、ない。
たとえ素晴らしい内容の舞台でも、そういう独特のノリがある場合ってけっこう多くて、僕はそれが大嫌いなんですよね。
『ラクエンノミチ』は、わりとこのまま映画やそれこそテレビドラマにしても、面白いんじゃないかな。

いままで見た舞台でも感動するものはあったけど、分かりづらかったり、さっき言った小劇場ノリがあったりで、誰にでもすすめる、ってことはありませんでした。
でもこれは、おすすめします。
阿佐ヶ谷近辺の人は、もし時間があれば、ぜひ見に行ってみてほしいです。
こういうものが近くで気軽に見れる環境って、恵まれてますよ。
その環境も含めて、これに2800円払うって、価値あることだと思います。

月曜まで、阿佐ヶ谷シアターシャインでやってます。

コメント