もう小劇場には行かない

モダンスイマーズの、実験公演を見に行きました。
本公演と違って、役者を3組に分けて、それぞれ1時間くらいの舞台をやる。
僕が見たのは『蝶のやうな私の郷愁』。
松田正隆という劇作家の書いた戯曲です。

登場人物はふたりだけ。
一幕の会話劇です。
夫婦の何気ない日常会話が続いていく中で、言葉の裏にある感情をお互い見ることができずに、だんだん心の溝が深まっていく。
その様子を、近づいてくる台風と重ねて描く。
実験公演とはいえ、モダンスイマーズらしい、すごく繊細な内容です。
客演の女優も独特の雰囲気で良かったし、とてもいい舞台でした。


でも!
もう俺は怒り心頭だよ!
なんでかって、客がクソだから!
こんな素晴らしい舞台なのに、まったく内容を分かってない、というかそもそも分かろうとしてない。
この芝居、言葉の裏の感情のすれ違いをひたすら描いてるのに、そこを無視して、言葉の表面だけに笑い転げてる。
ずーっと、ですよ?
例えば、妻が、突然「バカヤロー!」って叫ぶシーン。
驚いた夫に、雨漏りに対して怒鳴ったんだ、って答える。
でもそれは、蓄積された感情の爆発なのに決まってるじゃん。
夫は妻の感情を気に留めない。
もしかしたら、妻も自覚してないかもしれない。
っていう、かなりエグいシーンなのに、「バカヤロー!」って叫んだとたん、大爆笑。
ふざけんなバカ!
俺が「バカヤロー!」って叫びたいよ!

表面しか見れない人、つまり、感情の機微に対する感覚を持ってない人もいて、それは仕方ない。
でも、それなら、モダンスイマーズ見に来なくていいじゃん。
もっと軽いエンタメ系の舞台だって、いくらでもあるんだから。
もし、分かってて笑ってるんなら、タチが悪い。
「小劇場」の舞台に行くと、必ずそういう客がいるんですよね。
彼らは、笑うために来てる。
だって、たいして面白くないシーンでも、スキあらば笑うんだもん。


マナーがね、ないんだよ小劇場には。
例えばクラシックのコンサートでは、咳払いすら遠慮する空気がある。
美術館で、大声でゲラゲラ笑うのはよくないって、誰でもわかってる。
ジャズやロックのライブだって、それぞれになんとなくマナーがある。
小劇場は、無法地帯。
例に出した「バカヤロー!」のシーンなんてさ、美術館でモナリザの絵を前にして、変な顔!って大笑いするようなもんだよ。
音楽なら、シンガーが感情こめて歌って顔をゆがめるのを見て、あるいは体をよじるを見て、笑うようなこと。
そんな失礼なこと、小劇場以外の場所では、ありえない。
表現者に対する敬意が、ないんだよ。
今回の舞台だって、どれだけ心血注いで作られか、ちょっとは想像しろよ。


モダンスイマーズをはじめ、小劇場にも素晴らしい内容のものがあります。
でも、うるさい客のせいで、まともに見ることができない。
というか、素晴らしいものに全く敬意が払われてない場所にいることが、耐えられない。
それだったら、わざわざ舞台を見になんて行かないよ。
舞台以外にも、いろいろあるから。
映画見にいったほうがいい。

この件、前にも何度かブログで書いてます。
もううんざりです。
もう二度と、小劇場の舞台を見に行くことはありません。
なので、小劇場関係のご友人のみなさま、僕に声をかけないようにお願いします。


いちおう、誤解のないように。
モダンスイマーズ自体は、とても素晴らしい劇団ですよ。
残念ながら、僕はもう見ることはないけれども。

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